【銀のバッチ/約束】 藤たまき





【あらすじ】
地方の全寮制高校に転入してきた柄木永江。
寮費が安かったのでオンボロな旧寮に入った永江は、
端正なクラス委員の波手と身体が弱い莢の、
たった三人だけで寮生活を始めることになった。
子供のように無邪気な莢が気になる永江だったが、
莢と波手の身体の関係を知ってしまい…?



おすすめ度:★★★★


ホーリーマウンテンシリーズ全2巻です。

1冊目「銀のバッチ」は桜桃書房版コミックスの
「銀のバッチ」「ロングスロー」の2冊を文庫1冊にまとめたもの、
2冊目「約束」は出版社の倒産でコミックス化されていなかった
未収録完結編が収録されています。

被虐待児である少年を中心とした三角関係が主軸の
切なく胸を締め付けられる物語です。
読み手の気力をゴリゴリ削られますが、読みごたえはすごい!

ハッピーエンドとは言えないので読み手を選びそうですが、
バッドエンドでもない・・・と私は思ってます。


ざっくりした感想はこちら。


「ショッキングな冒頭シーン」

「若すぎるセックスは心を蝕む」

「皮肉な形で守られる一生の約束」


以下、ネタバレありの感想です。






「ショッキングな冒頭シーン」

物語は莢の死から始まります。
その後は回想で、莢自身を含めた色々な人の視点から、
莢について語られていく、と言うお話です。

萩尾望都先生の「トーマの心臓」を彷彿とさせますが、
トーマは自殺なのに対し、莢は病死です。

被虐待児の莢が、献身的な波手(はた)によって立ち直り、
愛し愛されようと懸命にもがいて、
永江の手を借りながら精神的にも成長していく姿は
とても眩しかったです。

でも、死ぬのを知っているから、見てて辛かった・・・。
莢が自分の運命も知らず、「一生」「ずっと」なんて言葉を使うたびに、
彼の報われなさに胸が痛みました。





「若すぎるセックスは心を蝕む」

藤たまきさんの作品にはしばしば幼すぎる少年の
セックスシーンが描かれていますが、
どの作品も若すぎるセックスを賛美してはおらず、
それによって心が蝕まれていく様を描いていると思います。


この作品の波手と莢の場合もそうで、
流されるように莢と関係を持ってしまった波手は
やがて罪悪感で心を壊していきます。

莢にとってセックスは幸せなことだったけれど、
波手にとっては違う。そのことに気づく莢も悩みます。

莢を挟んで波手と三角関係にある永江は、
二人が身体の関係にあるから太刀打ちできないと思っていて、
逆に波手はそのことに罪悪感があるので、
プラトニックな永江には勝てない、と思っている。
このあたりの心理描写は秀逸だな、と思いました。




「皮肉な形で守られる一生の約束」

親代わりの波手を刷り込みのようにひたすら愛し、
対等な永江には思春期そのものの恋をして、
莢を中心とした絶妙なバランスの三角関係。

でも、その関係は莢の死によって突然終わりを迎えます。

母親の虐待による極端な虚弱体質がなければ、
山奥の設備の整わない古い寮に入れられていなければ、
風邪なんかで死ぬことはなかったはず。


周りの大人たちに殺されてしまったようなもので、
莢の死には激しい憤りも感じます。

最後の最後まで自分が死ぬなんて
思ってもいなかったんだろうな、と思うと胸が苦しいです。

いつも莢が願っていた「一生友達」「一生恋人」
彼の「一生」があまりにも短かったために皮肉にも叶ってしまう。

何ともやりきれない気持ちになりました。

救いと言えば、波手との関係が好転していたことかな。
でも、その矢先に死なれた波手のショックを考えると
それも何とも言えないです。



胸をかきむしりたくなるようなお話ですが、
面白かったかと言えば、やっぱり面白かったです。
悲劇的なのに不思議な清涼感がありました。

同作者の作品で似たモチーフのものに「アタ」がありますが、
こちらはもっと柔らかい着地点でした。
やっぱり若かったから?作品も尖ってるな、と思いました。
ハッピーになりたい時には読んではいけない・・・そんな作品でした。



ここまで読んで下さってありがとうございました!
長文になってしまってすみません・・・。
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Tag:★4

COMMENT 2

ちぃみな  2015, 01. 23 [Fri] 20:06

削られてきましたw

ハムコさん こんばんは♪
自分を叱咤激励しながら、なんとか再読。
二度目でも、読み終わると放心してしまいました。

最初に死という結末を知らされながらも
一生懸命生きてる莢を見ていると、
そんな事は忘れて一心に応援したくなるし
なし崩しで始めてしまった身体の関係に苦しむ波手を見てると、
救える手だては無いのか考えたくなる。
でも「プラベ」もそうですが、
この身体が先行してしまった苦しさは、
時が経ち、もう少し大人にならないと解決できないんですね。。

莢と波手の関係の閉塞感に息苦しさを感じながらも
永江の健やかさに助けられて、なんとか読み進めていくと
全てを注いでくれる波手との愛と、
理解してくれながらも甘やかさない永江との恋の両方が
莢を成長させるのだとわかり、
これからの莢の人生に思いを馳せたくなったところで
でも、それは唐突に断たれ、
最初に知らされた結末に戻ってきて、
ああそうだった・・・と、また哀しくなる。

莢の死は哀しい。
でも、波手も永江も、ちゃんと大人になってる。
子供の持つしなやかな靭さを感じさせる終わり方なのが
せめてもの救いかな。
削られまくったけど、やっぱり読んで良かったですw
(ブックオフで単行本を見かけたのは僥倖だったな)

では、また♪

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ハムコ  2015, 01. 23 [Fri] 22:31

>ちぃみな様

ちぃみなさん、こんばんは!

削られてきましたかw
ちぃみなさんの感想待ってましたよ~!
そうそう、放心状態になっちゃいますよね。

何で莢が死ななくちゃいけなかったんだろう、
いくらでも死なない道があったんじゃないかと
思えてしまってちょっと辛かったです。

波手の苦しみも本当に助けてあげたくなりました。
あそこの両親も大概おかしいですよね?
お母さんは子ども思いとか言う話だったけど、
校医さんもちょっと首をかしげてたし・・・。

> この身体が先行してしまった苦しさは、
> 時が経ち、もう少し大人にならないと解決できないんですね。。
今だと条例で描けない内容なのかもしれないですけど、
このお話、決して安易に関係を持つことを
助長するようなものではないと思うんですよね。
むしろ、性についてちょっと考えさせられると思うんです。

> でも、波手も永江も、ちゃんと大人になってる。
> 子供の持つしなやかな靭さを感じさせる終わり方なのが
> せめてもの救いかな。
そうですね。哀しみはなくなってはいないけれど、
二人ともちゃんと地に足を付けて生きている。
それは良かったな、と思ったので、
バッドエンドではないな、と思ったのですが、
やっぱり・・・ハッピーエンドにはなりえない・・・。
せめてこの先の二人が、他の誰かをちゃんと愛して
幸せになって欲しいな、と思いました。

切ないけど、いい作品でしたね。
この作品を教えて下さってありがとうございました!

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